リアリティ+(プラス) 下

リアリティプラスゲ

バーチャル世界をめぐる哲学の挑戦

リアリティ+(プラス) 下の表紙
IT / 数学
著者:
デイヴィッド・J・チャーマーズ / 高橋 則明(デイヴィッド ジェイ チャーマーズ / タカハシ ノリアキ)
出版社:
NHK 出版
出版日:
2023年03月25日
ISBN:
9784140819371
在庫:
在庫あり
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書籍紹介

VR は“真の実在〞なのか? さまざまな思考実験をもとに新たな「現実」に迫る!

はたして私たちは自分がいまシミュレーションの世界の中にいる可能性を排除できるだろうか。すなわち例えば、『マトリックス』のネオのように、自分では気づかずに機械の生み出す仮想の世界を生きている、という可能性を排除できるだろうか。そして、もしそれができなければ、いかにして私たちは自分がいま生きている世界が偽りのバーチャル世界でないことを確かめられるのだろうか。これが本書で取り組まれる中心的な問題である。チャーマーズはこれにさまざまな角度からアプローチするのだが、彼は究極的には《私たちは自分がシミュレーションの世界を生きている可能性を排除できない》という点を認める。
ーー山口尚 本書「解説」より

〈目次より〉
第 5 部 心と意識の問題

第 14 章 バーチャル世界で、心と体はどう相互作用するか?

第 15 章 デジタル世界に意識は存在しうるか?

第 16 章 AR は心を拡張するのか?

第 6 部 倫理と価値の転換

第 17 章 バーチャル世界で良き生を送ることができるのか?

第 18 章 シミュレートされた命は重要か?

第 19 章 バーチャル社会をどのようにつくるべきか?

第 7 部 シミュレーションの中の真実

第 20 章 バーチャル世界で私たちの言葉はどういう意味を持つか?

第 21 章 塵の雲はコンピュータプログラムで動いているのか?

第 22 章 実在は数学的構造なのか?

第 23 章 私たちはエデンの園から追放されたのか?

第 24 章 私たちは夢の世界のボルツマン脳なのか?

第 5 部 心と意識の問題

第 14 章 バーチャル世界で、心と体はどう相互作用するか?

第 15 章 デジタル世界に意識は存在しうるか?

第 16 章 AR は心を拡張するのか?

第 6 部 倫理と価値の転換

第 17 章 バーチャル世界で良き生を送ることができるのか?

第 18 章 シミュレートされた命は重要か?

第 19 章 バーチャル社会をどのようにつくるべきか?

第 7 部 シミュレーションの中の真実

第 20 章 バーチャル世界で私たちの言葉はどういう意味を持つか?

第 21 章 塵の雲はコンピュータプログラムで動いているのか?

第 22 章 実在は数学的構造なのか?

第 23 章 私たちはエデンの園から追放されたのか?

第 24 章 私たちは夢の世界のボルツマン脳なのか?

技書の森解説

『リアリティ+(プラス) 下』 (デイヴィッド・J・チャーマーズ 著、高橋則明 訳、NHK 出版、2023 年 3 月刊) は、副題に「バーチャル世界をめぐる哲学の挑戦」を掲げる哲学書の下巻です。原題は REALITY+ で、日本語版は上下 2 巻に分けて刊行されました。プログラミングやシステム構築を教える技術書ではなく、VR は真の実在なのか、私たちは自分がシミュレーションの世界の中にいる可能性を排除できるのかという問いを、さまざまな思考実験をもとに検討する本です。VR / AR / シミュレーションという題材そのものが IT と重なるため、これらの技術に関わる人が自分の作るものの意味を根本から考える材料として、本サイトでも取り上げます。

下巻の収録範囲、第 5 部から第 7 部の 11 章

上巻は序章と第 1 部から第 4 部 (第 1 章から第 13 章) で、シミュレーション説とは何か、リアリティとは何か、VR ヘッドセットは現実をつくり出すのかといった土台を扱います。下巻はその続きで、第 14 章から第 24 章までの 11 章を収めます。第 5 部「心と意識の問題」 (第 14 章から第 16 章) は、バーチャル世界で心と体はどう相互作用するか、デジタル世界に意識は存在しうるか、AR は心を拡張するのかを問います。第 6 部「倫理と価値の転換」 (第 17 章から第 19 章) は、バーチャル世界で良き生を送ることができるのか、シミュレートされた命は重要か、バーチャル社会をどのようにつくるべきかへ進みます。第 7 部「シミュレーションの中の真実」 (第 20 章から第 24 章) は、バーチャル世界で私たちの言葉はどういう意味を持つか、塵の雲はコンピュータプログラムで動いているのか、実在は数学的構造なのか、私たちはエデンの園から追放されたのか、私たちは夢の世界のボルツマン脳なのかという 5 つの問いで締めます。本書には山口尚による「解説」も収録されています。

計算とシミュレーションを技術者の視点で読み直す

シミュレーション仮説が単なる空想に留まらないのは、世界を計算で再現できるという前提が、コンピュータサイエンス の基礎にある計算可能性の考え方と直結しているからです。ゲームエンジンや物理シミュレータは、限られた計算資源で見かけ上の世界を描くために、観測されていない部分の計算を省き、必要になった瞬間に生成します。この「必要なときだけ計算する」設計は、私たちの世界がシミュレーションだった場合にどこまで精密に作られている必要があるのかという議論と同じ構造を持ちます。また、第 15 章が掲げるデジタル世界に意識は存在しうるかという問いは、AI が人間らしい応答を返すようになった 2020 年代に、実装する側も避けて通れない問題になりました。版元の紹介文が引く山口尚の解説によれば、チャーマーズはさまざまな角度からこの問題に取り組んだうえで、究極的には「私たちは自分がシミュレーションの世界を生きている可能性を排除できない」という点を認めます。結論だけを言えば一行ですが、どの前提を置くとどの結論に至るのかを一つずつ確かめていく過程こそが本書の読みどころです。

著者チャーマーズの経歴と、上巻から読む前提

著者のデイヴィッド・J・チャーマーズは 1966 年オーストラリアのシドニー生まれの哲学者 / 認知科学者で、本書刊行時の版元プロフィールではニューヨーク大学哲学教授、同大学の心 / 脳 / 意識センター共同ディレクターとされています。アデレード大学で数学とコンピュータサイエンスを学び、オックスフォード大学で数学を専攻した後、インディアナ大学で哲学 / 認知科学の Ph.D. を取得しており、専門は心の哲学、認識論、言語哲学、形而上学です。2015 年にジャン・ニコ賞を受賞し、著書に『意識する心』があります。数学とコンピュータサイエンスの素養を持つ哲学者が書いた本である点は、技術者が読む際の安心材料になります。訳者の高橋則明は翻訳家で、クリス・アンダーソン『フリー』やケン・シーガル『Think Simple』 (いずれも NHK 出版) などの訳書があります。読む順序は上巻からが前提です。下巻の章番号が第 14 章から始まるとおり、シミュレーション説やリアリティの定義といった上巻の議論を引き継いで進むため、下巻だけを手に取ると前提を欠いたまま議論を追うことになります。

向かないのは、VR アプリの実装手順やヘッドセット向け開発環境の使い方、事業としてのバーチャル空間の設計といった実務的な答えを求める人です。本書は哲学書であり、コードや操作手順を扱う本ではありません。得られるのは問いの立て方と、それに対する哲学の側からの応答です。逆に、VR や AR、シミュレーション、AI に技術者として関わりながら、自分が作っているものは実在なのか、そこに意識や倫理はどう関わるのかを一度は考えておきたい人、あるいは『マトリックス』のような作品が投げかける問いを本気で追いかけたい人には、上下巻を通して読む時間が長く効く一冊です。技術の実装から一歩引いて、その意味を自分の言葉で語れるようになりたいなら、下巻が扱う心と意識、倫理、真実の 3 部は格好の道具になります。

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