シンギュラリティは近い

シンギュラリティ ワ チカイ

人類が生命を超越するとき

シンギュラリティは近いの表紙
AI / 機械学習
著者:
レイ・カーツワイル / NHK 出版(カーツワイル, レイ / エヌエイチケイ シュッパン)
出版社:
NHK 出版
出版日:
2016年04月
ISBN:
9784140816974
在庫:
在庫あり
3.52(43 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
人工知能技術的特異点フューチャリズムAI 予測未来技術人間拡張AI 倫理技術予測AI 開発転換点理論

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書籍紹介

2045 年、AI が人類の知性を上回り、ついに私たちは生物の限界を超えてシンギュラリティへと到達するーフューチャリストとして技術的特異点の到来をいち早く予見し、現在は AI (人工知能) の世界的権威として Google 社で AI 開発の先頭に立つレイ・カーツワイル。彼が世界に衝撃を与えた 600 ページ超の名著『ポスト・ヒューマン誕生』のエッセンスを抜き出した決定版。

技書の森解説

『シンギュラリティは近い [エッセンス版] 人類が生命を超越するとき』 (レイ・カーツワイル 著、NHK 出版 編、NHK 出版、2016 年 4 月刊) は、AI が人類の知性を上回る時点、すなわち技術的特異点 (シンギュラリティ) の到来を論じた未来論の一般書です。プログラミングやシステム設計を教える技術書ではなく、版元の分類も翻訳書に置かれています。原著 "The Singularity Is Near" の全訳は 2007 年に『ポスト・ヒューマン誕生』として日本放送出版協会から刊行されており、本書は版元が 600 ページ超と記すその大著から要点を抜き出したエッセンス版 (国立国会図書館の書誌では抄訳) です。著者のレイ・カーツワイルは、版元紹介文では技術的特異点の到来をいち早く予見した未来学者であり、2016 年の刊行時点で Google 社の AI 開発の先頭に立つ人物として紹介されています。版元ページには WIRED 誌創刊編集長ケヴィン・ケリーの推薦文も掲げられています。

全 6 章とエピローグの構成、収穫加速の法則から技術的特異点論者の宣言まで

構成は全 6 章に、エピローグと編集部によるあとがきに代わる文章を加えたものです。第一章「六つのエポック」は、著者が進化の歴史を六つの段階で区切って見せる枕にあたり、第二章「テクノロジー進化の理論」で中心概念である「収穫加速の法則」、つまり技術の進歩は線形ではなく指数的に加速するという主張が展開されます。第三章「人間の脳のコンピューティング能力を実現する」と第四章「人間の知能のソフトウェアを実現する」は、脳に匹敵する計算能力をハードウェアで得る見通しと、脳のリバースエンジニアリングによって知能のソフトウェアを得る道筋を扱います。第五章「衝撃……」と第六章「わたしは技術的特異点論者だ」は、章題が示すとおりその先に待つ帰結と、著者自身の立場の表明に紙面を割きます。版元紹介文が掲げる 2045 年という年号は、AI が人類の知性を上回るとする著者の見立てです。

指数的成長という予測の方法論を IT エンジニアはどう読むか

技術書の読者にとって本書の接点は、計算能力の指数的な伸びを前提に未来を外挿するという方法論そのものにあります。半導体の集積度がおよそ 2 年で倍になるというムーアの法則は 1965 年に始まる経験則ですが、著者はこれを特定の素子技術に依存しないもっと長い時間軸の傾向として捉え直し、ある技術が限界を迎えても次のパラダイムが引き継ぐ形で加速が続くと論じます。この見方は、2012 年前後から画像認識で成果を出し始めた 深層学習 が、アルゴリズムとしては 1980 年代に確立していた ニューラルネットワーク であり、GPU による計算量とデータ量の増大で実用域に達したという経緯と重ねて読むと具体性を帯びます。一方で、指数的な曲線がいつまで続くかは消費電力や製造コスト、学習データの量といった工学的な制約に左右され、著者の楽観を共有するかどうかは読者の判断に委ねられます。本書はその判断のための論拠を著者の側から体系的に示した一冊であり、機械学習 の性能向上を追う実務者が、自分の見ている曲線をどの時間軸に置いて考えるかの材料になります。

前提知識と、エッセンス版と全訳『ポスト・ヒューマン誕生』の使い分け

前提知識は特に要りません。専門書ではなく一般読者向けの翻訳書なので、IT の実務経験がなくても読み通せます。版歴としては、全訳『ポスト・ヒューマン誕生』が 2007 年に出てから 9 年後の 2016 年に、NHK 出版の編集で要点を抜き出した本書が刊行された順序です。議論の骨格を短時間で押さえたい人は本書、著者が予測の裏付けとして積み上げた細部の論証まで追いたい人は全訳、という使い分けになります。ただし著者の予測は原著執筆時の見立てであり、本書の刊行された 2016 年は囲碁 AI が人間のトッププロ棋士に勝った年でもあります。読むときは、どの主張が原著の時点のもので、その後の展開と照らしてどう見えるかを意識すると、予測の当たり外れそのものより「なぜそう予測したか」の論理が浮かび上がります。なお版元サイトでは関連書として『シンギュラリティはより近く』が挙げられています。

長期の技術展望を求めるエンジニアに向く読み方と、向かない期待

向くのは、AI や計算基盤の仕事をしていて、四半期単位のロードマップより長い時間軸で自分の技術領域を眺めたい人です。特異点という言葉が会議や記事で使われるとき、その原典がどんな論理で組み立てられているかを知っていれば、賛成でも反対でも議論の足場を持てます。逆に、機械学習の実装や AI サービスの設計手順を学びたい人にとって、本書は技術の使い方を教える本ではないため期待に合いません。また、著者自身の立場を表明する第六章の章題が示すとおり本書は特異点論者の側から書かれた一冊であり、予測は検証された事実ではなく著者の仮説として読む必要があります。AI の指数的な進歩という言葉を、雰囲気ではなく原典の論理で語れるようになりたい人には、短時間で骨格を押さえられるこのエッセンス版が効率のよい入口です。

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