ユーザーエクスペリエンスの測定
ユーザーエクスペリエンスノソクテイ
UX メトリクスの理論と実践
- 著者:
- トム・タリス / ビル・アルバート / 篠原稔和(トムタリス / ビルアルバート / シノハラトシカズ)
- 出版社:
- 東京電機大学出版局
- 出版日:
- 2014年11月10日頃
- ISBN:
- 9784501552909
- シリーズ:
- 情報デザインシリーズ
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
サービスやシステムを使用するにあたって得られる、行動パターンや行動頻度 (ユーザーの経験: UX) を測定することによって、ユーザーの満足度 (楽しさや心地よさ) を把握することが可能となった。この手法を用いることにより、ユーザーがどこで非効率化を感じ、どこに不満を抱くのかという部分を把握し分析することができる。本書は UX の測定方法やデータの分析方法について、理論と豊富な事例 (実践) に基づき詳しく解説した。
技書の森解説
UX (ユーザーエクスペリエンス) は測れるのか、測るなら何をどう集めて誰にどう見せるのか。『ユーザーエクスペリエンスの測定』 (トム・タリス、ビル・アルバート 著、篠原稔和 監訳、ソシオメディア株式会社 訳、東京電機大学出版局、2014 年 11 月刊) は、この問いに答える UX メトリクスの実務書です。原タイトルは Measuring the User Experience で、副題は「UX メトリクスの理論と実践」、情報デザインシリーズの 1 冊として刊行されました。前書きは本書を「実務書であって、理論的な学術論文ではない」と位置づけ、どの状況でどのメトリクスを使い、どう収集し、どう分析して、結果をどう見せるかについて実践的な助言を示すと述べています。
全 11 章の構成、調査の計画からケーススタディまで
目次は全 11 章です。第 1 章でユーザビリティと UX メトリクスの定義を整理し、UX メトリクスについての 10 の誤解を取り上げます。第 2 章「背景となる情報」はユーザビリティ調査の設計、データのタイプ、記述統計、平均値の比較、変数間の関係、ノンパラメトリック検定、データのグラフ表示までを含み、第 3 章「ユーザビリティ調査の計画」では調査の目的とユーザーの目的から、10 種類のユーザビリティ調査に応じたメトリクスの選び方へ進みます。第 4 章から第 8 章がメトリクスの各論で、第 9 章「特別なトピック」は稼働中のウェブサイトのデータ、カードソート、アクセシビリティ、ROI などを扱います。第 10 章は外部の執筆者によるケーススタディ 6 本、第 11 章「さらに前進するために」は社内でメトリクスを根づかせるための助言で締めくくられます。
パフォーマンスから自己申告まで、指標の系統を使い分ける
各論の章は、何を根拠に UX を数えるかで分かれています。第 4 章のパフォーマンスメトリクスはタスク成功率、タスク時間、エラー、効率、学習可能性で、ユーザーが実際に何をできたかを数えます。第 5 章はテストで見つかったユーザビリティ問題そのものを数え、深刻度の評価や参加者の数の考え方を扱います。第 6 章の自己申告メトリクスはタスク終了後とセッション終了後の評価に分かれ、デザイン比較のための SUS の使用という節があります。SUS (System Usability Scale) は 10 項目の質問への回答を 0 から 100 の得点に換算する質問紙で、異なる製品や版の比較に使われてきた定番の尺度です。第 7 章は行動と生理のメトリクス、第 8 章は複数の指標を統合したスコアやスコアカード、目標値や熟練者との比較を扱います。行動の数字と主観の数字は食い違うことがあり、どちらか片方だけでは改善の優先順位を決めにくいという点が、指標を系統で分けて学ぶ意味です。
統計の前提と、2014 年刊であることの読み方
ユーザビリティテストの数字は参加者が少ないほどばらつき、2 つの案の差が偶然かどうかを見極めるには 統計学 の道具が要ります。本書は第 2 章で記述統計から平均値の比較、ノンパラメトリック検定までを先にまとめているため、検定の考え方に不慣れな読者もそこから入れますが、表計算ソフトで数値を扱う程度の素地はあったほうが読み進めやすいでしょう。稼働中のサービスで A/B テスト を回す場面でも、2 つの案の差が偶然かどうかを見極める考え方は変わりません。第 9 章は稼働中のウェブサイトのデータを扱いますが、目次にアクセス解析ツールの操作手順を扱う章はありません。また 2014 年刊のため、第 6 章のオンラインサービスの節に代表される道具の事情は刊行時点のものです。一方で、指標の定義、調査の設計、結果の報告の型は道具が替わっても使い回せる部分です。
前書きが挙げる読者は、ユーザビリティや UX の専門家、インタラクションデザイナー、情報アーキテクト、ウェブ開発者、ソフトウェア開発者から、マーケティングや市場調査の担当者、プロジェクトマネージャー、製品マネージャーまでと幅広く、人が使うものであれば UX は測定できるという立場をとっています。デザインの手法そのものを学ぶ本ではないので、画面設計の引き出しを増やしたい人は別の本と組み合わせるのが近道です。改善の効果を数字で示して予算や優先順位の議論に持ち込みたい人、ユーザビリティテストの結果を感想の羅列で終わらせたくない人にとって、指標の選び方から報告の仕方、ケーススタディまでを 1 冊で通して確かめられる本書は、手元に置いて繰り返し引ける参考書になります。