メディア不信
メディアフシン
何が問われているのか
- 著者:
- 林 香里(ハヤシ カオリ)
- 出版社:
- 岩波書店
- 出版日:
- 2017年11月24日頃
- ISBN:
- 9784004316855
- シリーズ:
- 岩波新書 新赤版 1685
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
「フェイク・ニュース」「ポスト真実」が一気に流行語となり、世界同時多発的にメディアやネットの情報の信憑性に注目が集まる時代。権威を失いつつあるメディアに求められるプロフェッショナリズムとは? 市民に求められるリテラシーとは? 独英米日の報道の国際比較研究を通して民主主義を蝕む「病弊」の実像と課題を追う。
技書の森解説
報道やネットの情報が信じられなくなったのはなぜか、という問いに、4 か国の報道の比較から答えようとする新書です。『メディア不信』は、ジャーナリズムとマスメディアの研究を専門とする林 香里 氏の著書で、岩波書店の岩波新書 新赤版 1685 として 2017 年 11 月に刊行されました。副題は「何が問われているのか」です。紹介文は、「フェイク・ニュース」「ポスト真実」が一気に流行語となり、世界同時多発的にメディアやネットの情報の信憑性に注目が集まる時代を背景に置き、独英米日の報道の国際比較研究を通して民主主義を蝕む「病弊」の実像と課題を追う本だと説明しています。
独英米日の報道を比べる国際比較研究の視点
紹介文が掲げる問いは 2 つです。1 つは、権威を失いつつあるメディアに求められるプロフェッショナリズムとは何か。もう 1 つは、市民に求められるリテラシーとは何か。前者は報道機関の側の問題で、後者は情報を受け取る側の問題です。本書はこの両方を、ドイツ、イギリス、アメリカ、日本の報道を比べる国際比較研究の形で扱います。刊行時点の著者紹介によると、著者はロイター通信社東京支局の記者、東京大学社会情報研究所の助手、ドイツのバンベルク大学の客員研究員を経て、東京大学大学院情報学環の教授を務めていました。さらに 2016 年 4 月から 2017 年 3 月まで、ノースウェスタン大学、ロンドン大学、ベルリン自由大学で客員研究員を務めています。比較の対象となるアメリカ、イギリス、ドイツの大学に滞在した期間の直後に出た本ということになります。
報道への信頼が民主主義の土台になる理由
ニュースが信頼されるかどうかは、個々の記事が正しいかどうかとは別の次元の問題です。報道機関は取材、事実の確認、編集という工程を経て情報を出すことで、受け手が一つひとつを自分で確かめなくても済む状態を作ってきました。その工程への信頼が崩れると、丁寧に裏付けを取った報道も根拠の薄い情報と同じように扱われ、社会は議論の前提となる事実を共有しにくくなります。選挙や政策をめぐる議論は共通の事実認識の上に成り立つため、メディアへの不信は報道業界の内側の話にとどまらず、民主主義の問題として語られます。
これに重なるのが、ソーシャルメディアを通じた情報の流れ方の変化です。誰もが発信できるようになった一方で、記事は配信元から切り離された断片として共有され、受け手は情報の出どころを確かめにくくなりました。報道機関への不信と、ネット上の情報への疑いが同時に起きる下地はここにあります。本書の紹介文も、メディアとネットの両方の情報の信憑性を問題にしています。
2017 年刊行という時点と、ジャーナリズムの本として向く読者
本書は 2017 年 11 月の刊行で、取り上げられる状況は刊行時点のものです。刊行後に起きた出来事や、情報の作られ方と届き方の変化は本書の範囲の外にあります。一方で、報道機関のプロフェッショナリズムと市民のリテラシーという 2 つの問いは、特定のサービスや技術に依存しません。時事の解説として読むよりも、報道の信頼がどのように成り立ち、どのように揺らぐのかを考える枠組みとして読むのに向いています。紹介文が示す軸は報道の国際比較なので、ファクトチェックの実務の手順や、ソーシャルメディアの表示順位を決める仕組みの技術的な解説を探している人は、それぞれを主題にした本を選ぶほうが目的に近づきます。
ニュースや投稿を届ける仕組みを作る IT エンジニアにとって、報道の信頼がなぜ民主主義の問題になるのかは、自分の仕事が社会のどこに触れているかを考える手がかりになります。情報の受け取り方に自分なりの基準を持ちたい人、日本の報道を他国と比べて位置づけたい人にとって、研究者が 4 か国の比較から問題の輪郭を示す本書は、新書の分量で議論の土台を得られる一冊です。
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