オペレーティングシステムの基礎

オペレーティング システム ノ キソ

ネットワークと融合する現代 OS

オペレーティングシステムの基礎の表紙
OS
著者:
電子情報通信学会 / 吉沢康文(デンシ ジョウホウ ツウシン ガッカイ / ヨシザワ, ヤスフミ)
出版社:
オーム社
出版日:
2015年11月
ISBN:
9784274218330
在庫:
在庫あり
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技書の森解説

『オペレーティングシステムの基礎』は、OS の役割と歴史から、割込み、ファイル管理、プロセス管理、仮想記憶、仮想計算機、そして TCP/IP の通信処理とネットワークプログラミングまでを 1 冊で扱う教科書です。電子情報通信学会 編、吉澤 康文 著で、オーム社から 2015 年 11 月に発売されました。副題は「ネットワークと融合する現代 OS」です。版元は本書を「OS を学ぶ上での教科書・参考書」と位置づけ、各章に演習問題があること、学生だけでなく基礎を学び直したい技術者も読める内容であることを紹介しています。

全 10 章の構成、序論からソケットプログラミングまで

主要目次は第 1 章「序論」から第 10 章「ネットワークプログラミング」までの全 10 章と付録で、どの章も演習問題の節で閉じます。第 2 章「ハードウェアとの接点」は割込み、主記憶装置、入出力装置を取り上げ、OS がハードウェアとどこで接するかを先に固めます。第 3 章「入出力制御とファイル管理」はブロッキング、バッファリング、キャッシングといったアクセス性能を高める技術とファイルシステムの信頼性を扱い、UNIX のファイルシステムを説明する節も置かれています。第 4 章「プロセス管理」と第 5 章「プロセス間通信」のあとは、第 6 章「メモリ管理」と第 7 章「仮想記憶制御方式」でページング機構からページリプレースメントまでを追います。第 8 章「OS の構成法と仮想計算機」を挟み、第 9 章「TCP/IP の通信処理」と第 10 章が副題のネットワークの部分にあたります。

排他制御とシステムコールで見る OS の内側

Web サーバーやデータベースのように多数の処理を同時に動かすソフトウェアでは、プロセスとスレッド のどちらで並行性を得るかによって、メモリの共有のしかたと障害が及ぶ範囲が変わります。共有するデータを守る ミューテックス のような同期の仕組みはライブラリを呼べば使えるように見えますが、その下では OS が処理を待ち状態へ移し、条件が整った時点で実行可能な状態へ戻すという状態の遷移を管理しています。性能の劣化や処理の停止を調べる時にこの層の理解が効いてくるのは、そのためです。本書の第 5 章はこの仕組みを OS の側から説明する章で、詳細目次にはセマフォ、生産者と消費者問題、デッドロックの回避の項が並びます。同じ章には pipe や dup、シグナルといった UNIX のシステムコールを取り上げる節もあり、概念と具体的な呼び出しを並べて確かめられる構成です。

TCP/IP の通信処理まで OS の視点でつなぐ

UNIX 系の OS では、開いたファイルや通信の端点が ファイルディスクリプタ という整数で識別されます。ディスクへの読み書きとネットワーク越しのやり取りを同じ形の呼び出しで書けるのはこの設計によるもので、入出力の考え方を一度押さえておくと通信の仕組みも読み解きやすくなります。本書の第 9 章はネットワークアーキテクチャと IP の概要に続いて TCP と UDP の概要を扱い、節題で RFC 793 と RFC 768 を示しています。TCP の RFC 793 は刊行後の 2022 年 8 月に RFC 9293 に置き換えられているので、仕様の細部は RFC 9293 で確かめる前提で読みます。第 10 章はソケットプログラミングの実際へ進みます。版元が紹介する、ネットワークを絡めた OS の視点で学べるという性格は、この 2 章に表れています。刊行は 2015 年 11 月で、記述はその時点の技術環境を前提にしています。

中級の読者に向く理由、ハードウェア寄りの学生と学び直しの技術者

版元の「このような方におすすめ」は、情報分野で特にハードウェア部門の専門を目指す学生と、ハードウェアの基礎の仕組みを再学習することを考えている技術者を挙げ、読者の段は中級を示しています。節題にシステムコールの名前が出てくるため、UNIX 系の環境でコマンドやプログラムを動かした経験があると読み進めやすくなります。逆に、Linux の運用手順やコマンドの使い方を覚えることが目的なら、目次は仕組みの説明で組まれているので、運用管理の本の方が近道です。

講義の教科書として OS を一通り学ぶ必要がある学生や、アプリケーション開発の経験を積んだうえでプロセスやメモリ、通信の下で何が起きているかを学び直したい技術者にとって、演習問題で理解を確かめながら割込みからソケットまでを 1 冊で通せる本書は、手元に置いておく価値のある教科書です。

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