紛争解決のためのシステム開発法務
フンソウカイケツノタメノシステムカイハツホウム
AI・アジャイル・パッケージ開発等のトラブル対応
- 著者:
- 松尾 剛行 / 西村 友海(マツオ タカユキ / ニシムラ トモウミ)
- 出版社:
- 法律文化社
- 出版日:
- 2022年04月05日頃
- 一覧:
- 2022 年に出た技術書
- ISBN:
- 9784589041883
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
どうすればシステム開発プロジェクトの失敗を防ぎ、企業価値の向上につなげることができるのか。数多くのシステム開発案件に携わってきた著者の豊富な実務経験をもとに、様々な紛争裁判や、紛争を防ぐための契約やそのプロセスなど、最新の動向に照らしてプロジェクトの失敗を防ぐための方法を解説する。
技書の森解説
システム開発の失敗が裁判所に持ち込まれたとき、何が争点になり、どうすれば最初から揉めずに済むのかを法律の側から整理した専門書が『紛争解決のためのシステム開発法務』です。著者は弁護士の松尾 剛行と、刊行時に大阪大学社会技術共創研究センター特任助教だった西村 友海の 2 名で、法律文化社から 2022 年 3 月 (NDL の書誌。版元公式の表記は 2022 年 4 月) に A5 判の単行本として出ています。副題は「AI・アジャイル・パッケージ開発等のトラブル対応」で、従来型の受託開発に加えて、機械学習を使う案件、反復型の開発、既製品を導入する案件までを視野に入れた構えが書名から読み取れます。
裁判例と契約のプロセスから失敗予防を説く構え
版元の紹介文によると、本書は AI やアジャイルの案件に多く関わってきた著者の実務経験をもとに、裁判例やモデル契約などの動向に照らして、どうすればプロジェクトの失敗を防げるかを解説します。システム開発の法解釈上の論点を押さえたうえで、AI、アジャイル、パッケージ開発の失敗予防を指南するという説明です。書誌の紹介文はさらに、様々な紛争裁判と、紛争を防ぐための契約やそのプロセスを扱い、プロジェクトの失敗を防いで企業価値の向上につなげることを目標に掲げています。巻末には索引があります。なお、詳しい目次は版元公式、版元ドットコム、出版書誌データベース、国立国会図書館の書誌のどれにも載っておらず、章立ては確かめられませんでした。どの論点に何章を割いているかは、書店や図書館で目次を見て判断してください。
なぜ技術の失敗が法律の言葉で語り直されるのか
開発が頓挫したとき、現場では見積もりの甘さや設計の不備といった技術の言葉で原因が語られます。一方で紛争になると、問われるのは契約で何を約束したか、誰がどの役割を負っていたか、それを果たしたかという点です。完成を約束する請負なのか、作業の遂行を約束する準委任なのかで、未完成のまま止まった案件の扱いは大きく変わります。要件定義 の段階で何が合意され、どの変更がどの手続きで受け入れられたかも、後から書面で確かめられるかどうかが分かれ目になります。こうした論点は、短い周期で計画を組み直す アジャイル 開発や、出力を事前に確定しにくい機械学習の案件では、従来の契約の型がそのまま当てはまらない分だけ難しくなります。副題がこの 3 つの開発形態を名指ししているのは、まさにこの難しさに向き合うためと読めます。
誰に向くか、読む前に知っておきたいこと
C コードは専門書を示す区分で、版元のジャンル分類も民法と諸法です。つまり、エンジニア向けの読み物ではなく法律書として作られています。法律用語を一から説明してくれる入門書を期待すると重く感じるはずなので、契約法の基本にまったく触れたことがない人は、先に平易な IT 契約の解説で請負と準委任の違いだけでも押さえておくと読みやすくなります。逆に、受託開発の契約書に目を通す立場の プロジェクトマネジメント の担当者、ベンダーやユーザー企業の法務担当、システム開発の案件を扱う弁護士にとっては、裁判例とモデル契約の動向を一冊で確かめられる点が手元に置く理由になります。2022 年の刊行なので、それ以降の裁判例や契約のひな型の改訂は含まれない前提で読む必要があります。
契約書のどの条項がいざというときに効くのか、議事録や変更の記録をなぜ残すべきなのかを、感覚ではなく裁判例の筋道で説明できるようになりたい人には、元が取れる一冊です。とくに AI を使う案件やアジャイル開発の契約で、従来の型が合わずに手探りしている組織なら、交渉の前に一度通読しておく価値があります。
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