Linux コードリーディングと RISC-V で学ぶ オペレーティングシステム入門の表紙

Linux コードリーディングと RISC-V で学ぶ オペレーティングシステム入門(リナックスコードリーディングトリスクファイブデマナブオペレーティングシステムニュウモン)

その他
著者:
清水 尚彦(シミズ ナオヒコ)
出版社:
共立出版
出版日:
2026年04月10日頃
ISBN:
9784320125957
在庫:
在庫あり
0
Linux

なぜ注目されているか

総合916位

書籍紹介

オペレーティングシステム (OS) の深部は、プロセッサの動作モードや複雑なアドレス変換が絡み合い、理論だけでは理解が困難な領域である。本書は、世界標準として採用が急拡大している「Linux」と、次世代のオープンアーキテクチャとして注目を集める「RISC-V」を題材に、最新カーネル (v6.12) の実コードを徹底的に読み解く「コードリーディング」の手法で構成した。

最大の特長は、抽象的な概念説明に留まらず、ブートストラップからメモリ管理、プロセス制御にいたるまで、C 言語とアセンブリ言語がハードウェアとどのように対話しているかを克明に描いている点にある。また、筆者が長年培ってきたプロセッサ設計の知見を活かし、ハード / ソフト両面の視点から OS の本質を解き明かしている。

本書に関連するウェブサイトからは、QEMU 上で即座に動作するサンプルプログラムと環境を提供している。読者は自らコードを追い、実際に動かすことで、C 言語や Linux を個別に学ぶだけでは到達できない「OS が動く具体的なイメージ」を立体的に獲得できる。情報理工学系の学生から、一歩先を目指す組み込みエンジニアまで、最新のモダン・システムをマスターするための必携の一冊である。

技書の森解説

オペレーティングシステムの仕組みを、概念図ではなく実際に動いているカーネルのコードで学びたい人のための一冊です。『Linux コードリーディングと RISC-V で学ぶ オペレーティングシステム入門』 (清水尚彦 著、共立出版、2026 年 4 月刊) は、版元の紹介によれば Linux カーネル v6.12 の実コードを RISC-V を題材に読み解く「コードリーディング」の手法で構成された B5 判の専門書で、ブートストラップからメモリ管理、プロセス制御にいたるまで、C 言語とアセンブリ言語がハードウェアとどのように対話しているかを描くことを特長に掲げています。版元は対象読者を情報理工学系の学生から一歩先を目指す組み込みエンジニアまでと位置づけ、講義用資料として講義用スライドと章末テスト問題の解答例も用意している (ダウンロードには ID とパスワードが必要) ことから、大学の講義テキストとしての利用も視野にある作りです。

全 10 章と 2 部構成、ユーザーモードから特権モードへ

構成は全 10 章で、コンピュータとオペレーティングシステムの歴史を扱う第 1 章の後、第 I 部「RISC-V と Linux のユーザーモード」 (第 2 章から第 5 章) と第 II 部「RISC-V と Linux の特権モード」 (第 6 章から第 10 章) の 2 部に分かれ、付録 A に QEMU による RISC-V プロセッサ用 Linux 動作環境、付録 B に演習問題解答例を収めます。第 2 章は RV32I 命令セットの概要、RV32I と C 言語の関係、Linux カーネルで利用する C 言語マクロを押さえる章で、第 3 章と第 4 章はユーザーモードプログラムの側から、ユーザーアプリケーションのメモリ配置、システムコール呼び出し、動的リンク、プロセスの生成と終了、ヒープ領域のメモリ確保、プロセス間通信 (IPC)、タイマー機構を追います。第 5 章は Linux のスケジューラに 1 章を割き、リアルタイムスケジューリング (固定優先度)、期限付きスケジューリング (SCHED_DEADLINE)、EEVDF スケジューラと公平性の概念まで扱います。第 II 部では、第 6 章でプロセッサモード、アドレス変換、割込みの仕組み、タイマー、ハイパーバイザー拡張という RISC-V 特権アーキテクチャを固め、第 7 章と第 8 章でカーネルの全体構造、カーネルの初期化とブート、トラップとシステムコール、Linux のメモリマップ、mmap システムコール、カーネル内メモリ割り当て、ファイルシステムへと進みます。第 9 章はカーネルモジュールとデバイスドライバ、第 10 章は Buddy アロケータによるメモリ管理、slab/slub アロケータの動作原理、コンカレンシーと排他制御などの補足で、全 10 章それぞれに章末テスト問題が付きます。

特権モードとアドレス変換を実コードで追う意味

OS 学習の難所は、ユーザープログラムから見える世界と、特権モードで動くカーネルの世界の間にある境界です。プロセッサの動作モードが切り替わる瞬間に何が起き、仮想アドレスがどの表を経て物理アドレスに変換され、割込みやトラップで制御がどこへ移るのか。これらは概念図で読むと分かった気になりますが、実際にどのレジスタへ何が書かれ、どの関数が呼ばれるかを追わない限り、システムコール 一つの裏側すら具体像を結びません。本書は RISC-V の特権アーキテクチャを第 6 章で先に押さえ、その上でカーネル側の C とアセンブリを読む順序を採るため、ハードウェアとソフトウェアの境界がコード上のどこにあるかを指で示せるようになります。題材が RISC-V である点も学習面で効いています。版元がオープンアーキテクチャと位置づけるこの命令セットは、QEMU 上で実機なしに動かせるうえ、版元の関連ウェブサイトからサンプルプログラムと動作環境が提供されるので、読んだコードをその場で実行して確認する往復が成立します。版元が筆者のプロセッサ設計の知見に言及し、ハードとソフトの両面から OS の本質を解き明かすと説明しているのも、この本の立ち位置をよく表しています。

前提は C 言語の読解力、Linux の使い方を学ぶ本ではない

前提知識としては、ポインタや構造体、マクロを含む C 言語の読解力と、レジスタやスタック、アドレス空間といったコンピュータの基本概念が必要です。RISC-V そのものは第 2 章が RV32I 命令セットの概要から始まる構成なので、この命令セットに初めて触れる人でも本書の中で追い付ける組み立てです。一方で、シェル操作やサーバー構築といった Linux の使い方を学ぶ本ではなく、x86 や Arm 固有のカーネル実装を追いたい人にも題材が合いません。プログラムの メモリレイアウト やプロセスの概念をまだ言葉で説明できない段階の人は、先に一般的な OS 入門書やアーキテクチャ入門書で土台を作ってから臨む方が、コードリーディングの密度に耐えられます。

読んで元が取れるのは、OS の講義でプロセスやメモリ管理の概念は学んだものの、それがカーネルのどのコードに対応するのか結び付いていない情報系の学生と、組み込み Linux をボードで動かしているが起動からデバイスドライバまでの中身が見えていないエンジニアです。スケジューリングポリシーの選択やドライバの実装、カーネルモジュールの扱いといった業務上の判断を、原理から説明できる状態に持っていけるのがこの本のペイオフです。低レイヤーの技術書全般をどこから読むべきかは OS・低レイヤー本ガイド が助けになりますが、Linux と RISC-V という具体的な組み合わせで実コードに踏み込むなら、章末テスト問題と演習問題解答例で理解を確認しながら進める本書は、独学でも講義でも軸に据えられる一冊です。

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