マネジメント 3.0
マネジメントサンテンゼロ
適応力の高いチームを育むための 6 つの視点
- 著者:
- 藤井 拓 / Jurgen Appelo(フジイ タク / ヨーガン アペロ)
- 出版社:
- 丸善出版
- 出版日:
- 2022年07月28日頃
- ISBN:
- 9784621307359
- 在庫:
- 在庫あり
なぜ注目されているか
書籍紹介
ここ数年ほどの間、DX という追い風や、日本や海外の市場での競争の激化もあり、日本でもアジャイル開発がようやく普及し、定着しつつある状況になってきている。アジャイル開発の実践が進むと、それらのアジャイル開発チームの中で自己組織化や奉仕型リーダーシップをうまく実現することで、開発メンバーの多様な意見 (観点) を取り入れてより良い成果を生み出したり、より働き甲斐のあるチーム (環境) を実現できる例が 増えていくことが期待できる。本書は、このような自己組織化や奉仕型リーダーシップなどに基づく新たなマネジメントのあり方、すなわちマネジメント 3.0 を提案するものである。複雑系の科学、マネジメント理論、社会学などに基づいて理論的に説明するとともに、組織に少しずつ試し、取り入れやすい様々なプラクティスを提案する。
推薦のことば
「私は、『何事であれ 5 ステップで成功する』というような解説本を好まない。私は、自分に考えさせる本ー新しいアイデアを示し、心理的な活力が流れるようにするものーが好きだ。ヨーガンの本は、後者に分類される。本書は、リードし、マネージすることー特に今日の荒れ狂う世界においてーについて、複雑な取り組みとして我々に考えることを求める。マネジメント 3.0 は、アジャイル/リーンへの転換に巻き込まれたマネージャー自身がどのようにアジャイルに『なり』うるかに対して示唆に富んだガイドを提供する。」
ージム・ハイスミス、エクゼブティブ・コンサルタント、ThoughtWorks, Inc.,
『アジャイルプロジェクトマネジメント』の著者
「私は、マネジメント 3.0 は今後 10 年にアジャイルなマネジメントの書籍の「聖書」になるだろうと固く信じている。」
ーエド・ヨードン、IT マネジメント/ソフトウェア コンサルタント、Nodruoy, Inc.、
『デスマーチ』の著者
「本書は、その場しのぎの解決策が欲しい人向けには書かれていない。本書は、マネジメントに対する情熱と愛を持つ、真剣な学習者向けに書かれている。本書は、マネジメントのクラフトマン (職人) 向けに書かれている。」
ーロバート C.マーティン、ObjectMentor, inc.のオーナー、「Clean Code」の著者
技書の森解説
アジャイル開発のチームが自分たちで仕事を組み立てるようになったとき、マネージャーは何を管理し、何を手放すべきなのか。『マネジメント 3.0』 (Jurgen Appelo 著、藤井 拓 訳、丸善出版、2022 年 7 月刊) は、この問いに複雑系の科学を手がかりに答えようとする本で、副題は「適応力の高いチームを育むための 6 つの視点」です。原タイトルは MANAGEMENT 3.0 で、原書は The Addison-Wesley Signature Series (A MIKE COHN SIGNATURE BOOK) の一冊です。版元の紹介文は、自己組織化や奉仕型リーダーシップなどに基づく新たなマネジメントのあり方を提案し、複雑系の科学、マネジメント理論、社会学などに基づいて理論的に説明するとともに、組織に少しずつ試し、取り入れやすい様々なプラクティスを提案する本と説明しています。
複雑性の問いから始まる全 16 章の構成
目次は全 16 章です。第 1 章「なぜ物事はそれほど単純ではないのか」で因果関係や複雑性、還元主義と全体論を取り上げ、第 2 章「アジャイルソフトウェア開発」、第 3 章「複雑系の理論」、第 4 章「情報-イノベーションシステム」と、議論の土台を固める章が続きます。第 5 章からは、第 5 章「人々をどのように元気づけるか」、第 7 章「チームにどのように委任するか」、第 9 章「制約をどのように揃えるか」、第 11 章「コンピテンスをどのように育むか」、第 13 章「構造をどのように成長させるか」、第 15 章「すべてをどのように改善するか」という問いの形の章が、第 6 章「自己組織化の基本」、第 8 章「意図的にリードし、統治する」、第 10 章「ルール作りの技能」、第 12 章「構造の上のコミュニケーション」、第 14 章「変革の地形」と交互に並びます。最後の第 16 章「全て間違っているが、いくらかは有用である」には「マネジメント 3.0 の 6 つの視点」という節が置かれています。どの章も「まとめ」と、振り返りとアクションの節で終わります。
複雑系の考え方をチームのマネジメントに持ち込む理由
伝統的な階層型のマネジメントは、原因と結果をたどれば成果を予測でき、計画どおりに人を動かせば目標に届くという線形の見方を前提にしがちです。ところがソフトウェア開発のチームは、人の動機や知識、相互のやり取りが絡み合って振る舞いが決まる系であり、部分を分解して最適化しても全体がよくなるとは限りません。アジャイル開発 が短い周期で作って確かめる進め方を取るのは、この予測しにくさを前提に、計画よりも適応を重んじるためです。本書では第 3 章が一般システム理論、サイバネティックス、ゲーム理論、進化論、カオス理論を順に取り上げ、第 6 章が自己組織化と創発、委任を扱います。チームを細かく指示して動かす対象でなく、条件を整えることで振る舞いが変わる系として捉え直すと、マネージャーの仕事は個々の作業の指示から、目的や制約、権限の境界といった環境の設計へと重心が移ります。
委任と制約、コンピテンスを扱う章の実務の手がかり
理論の章だけでなく、目次には日々の運営にそのまま持ち込める題材の節が並びます。第 5 章には「チームメンバーの 10 個の願望」、第 7 章には「適切な権限のレベルを選択する」と「委譲チェックリスト」、第 9 章には「権限の境界リストを作る」と「社会的な契約を作る」があります。第 11 章は「マネージ 対 コーチング 対 メンタリング」「1 on 1 を持つ」「360 度ミーティングを計画する」へ、第 13 章は「機能チーム 対 機能横断チーム」「最適なチーム規模は (おそらく) 5 名である」へと進みます。一般に、委任の度合いを全か無かで考えず、題材ごとに段階を決めてチームと合意するという考え方は、権限を渡しすぎて混乱する失敗と、渡さずに主体性を奪う失敗の両方を避けるための道具になります。
アジャイルなチームを率いる立場で読む判断材料
推薦のことばの中で、ロバート C.マーティンは、本書はその場しのぎの解決策が欲しい人向けには書かれていないと述べています。会議の進め方や手順を数ステップで示す手引きを探している人には、目的が合いにくい本です。一方で、スクラムなどの実践がチームに根づき、管理職やリーダーとしての自分の役割を言葉にし直したい人、自己組織化と統制の釣り合いを理屈から考えたい人にとって、複雑系の理論から委任、制約、組織構造、改善までを一冊でたどれる本書は、腰を据えて読む価値のある一冊です。チーム開発やマネジメントの本を段階別に比べたい場合は、チーム開発 / マネジメント本ガイド で位置づけを確かめてから選ぶと、自分の立場に合う順序が見えてきます。
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