リーン開発の現場

リーン カイハツ ノ ゲンバ

カンバンによる大規模プロジェクトの運営

リーン開発の現場の表紙
ソフトウェア工学 / 設計
著者:
ヘンリック・クニバーグ / 角谷信太郎(クニバーグ, ヘンリック / カクタニ, シンタロウ)
出版社:
オーム社
出版日:
2013年10月
ISBN:
9784274069321
在庫:
在庫あり
4.5(19 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
リーン開発カンバンシステムソフトウェア開発プロジェクト管理官公庁システム大規模システム開発アジャイル開発プロセス改善実務経験開発手法

なぜ注目されているか

言及数
251位
総合450位 ↑ 4 ランクアップ 言及 13 件・うち記事 11 件を掲載
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書籍紹介

官公庁の大規模システム開発における、カンバンシステムを軸にしたプロジェクト進行の様子を、著者の経験に基づいて描写。「リーンソフトウェア開発」を現場でどのように適用するかを直裁的に解説しています。

技書の森解説

スクラムやカンバンの解説書を読んでも、数十人が関わる開発で実際にボードをどう組み、会議をどう回すのかが見えてこない。そうした悩みに、ひとつのプロジェクトの具体的なやり方で答える本が『リーン開発の現場』 (Henrik Kniberg 著、角谷 信太郎 監訳、市谷 聡啓、藤原 大 訳、オーム社、2013 年 10 月刊) です。副題は「カンバンによる大規模プロジェクトの運営」、原書は Lean from the Trenches: Managing Large-Scale Projects with Kanban です。版元の紹介によると、アジャイル なソフトウェア開発の手法の一つであるリーンソフトウェア開発を、スウェーデンの国家警察機関で PUST と呼ばれるデジタル捜査報告システムを開発した著者の経験に基づき、カンバンシステムを軸にしたプロジェクト進行の様子を描きながら解説しています。

2 部 21 章の構成、現場のやり方から個別の技法へ

本書は 2 部に分かれます。第 I 部「僕らのやり方を伝えよう」は第 1 章から第 16 章までで、プロジェクトの概要とチーム編成から始まり、機能開発チームのスタンドアップからプロジェクト全体の同期まで 3 段階で重ねるミーティング、プロジェクトボードと、それを大きな体制へ広げるやり方、準備ができたと判断する基準の定義、技術課題とバグのさばき方、継続的なプロセス改善、WIP のマネジメント、プロセスメトリクス、スプリントとリリースの計画、バージョン管理の方法へと進み、アナログなボードを使う理由と学んだことで締めくくられます。第 II 部「テクニックを詳しく見る」は第 17 章から第 21 章までで、アジャイルとリーン、スクラム、XP、カンバンの概要、テスト自動化の戦略、プランニングポーカーによる見積り、因果関係図を個別に掘り下げ、第 21 章の最後に伝えたいことで閉じます。巻末にはバズワードの濫用を避けるための用語集、参考資料、本書のプロジェクトボードについての付録が置かれ、訳者あとがきと日本語版解説が続きます。現場で使ったやり方を先に通して見せ、その下で使われていた技法を後から分けて説明する組み立てと読めます。

WIP 制限とメトリクスがフローを変える理由

カンバン の核心は、ボードに作業を貼り出すこと自体よりも、同時に進める作業の量 (WIP) に上限を設けることにあります。手をつけた作業が増えるほど、一つひとつが完了するまでの時間は延び、途中で止まった作業がボトルネックを隠してしまいます。上限を置くと、詰まっている工程が目に見える形で表に出るため、チームは新しい作業に手をつける前に、滞っている作業を片づけに行く判断ができるようになります。第 11 章が WIP の制限に加えて、機能開発だけに上限をかける節を設けているのは、上限をどこにかけるかが運用の要になると読めます。また第 12 章はベロシティ、ストーリーポイントを使わない理由、サイクルタイム、累積フロー図、プロセスサイクル効率を並べています。ベロシティが一定期間にこなした量を測るのに対し、サイクルタイムは 1 つの作業が着手から完了までにかかった時間を測るもので、後者は利用者から見た待ち時間に直結します。どの指標で流れを見るかを選ぶときに、この章の並びが判断材料になります。

プロジェクトリーダー向けの初級書という位置づけ

版元がおすすめする読者は、リーンソフトウェア開発を実践したいと考えているプロジェクトマネージャー、プロジェクトリーダー、チームリーダーで、読者の段は初級に印が付いています。第 17 章でアジャイルとリーン、スクラム、XP、カンバンの概要をまとめているため、それぞれの手法を深く知らない段階でも、第 I 部の現場の話と行き来しながら読み進めやすい構成と読めます。一方で、ひとつのプロジェクトのやり方を伝える本であり、手法を体系的に網羅した教科書ではありません。2013 年刊の本であり、紹介される運用は刊行当時の開発環境を前提に読む必要があります。チームの運営や育成を広く学びたい場合は、チーム開発とマネジメントの本の選び方 から別の一冊と組み合わせると目的に届きやすくなります。

複数のチームが関わるプロジェクトで、ボードと会議の設計に手探りしているリーダーや、カンバンを導入したいが実際の運用の姿を一度見てから決めたい人にとって、本書は具体的な判断の材料を一冊にまとめて渡してくれます。第 I 部で全体のやり方をつかみ、必要に応じて第 II 部の技法へ戻る読み方で、自分の現場に持ち込める部分を見極めてみてください。

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