正しいものを正しくつくる

タダシイモノヲタダシクツクル

プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について

正しいものを正しくつくるの表紙
ソフトウェア工学 / 設計
著者:
市谷聡啓(イチタニトシヒロ)
出版社:
ビー・エヌ・エヌ新社
出版日:
2019年06月14日頃
ISBN:
9784802511193
在庫:
在庫あり
3.96(29 件 / 楽天ブックス)
中級者向け
アジャイルスクラムプロダクトマネジメントソフトウェア開発チームコラボレーション探索的開発ユーザー中心設計仮説検証不確実性の管理共創

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書籍紹介

従来のソフトウェア開発とは、「既に正解があり、記述された正解をそのまま形にする」というものづくりであり、いかに効率よく作るかという観点が主眼でした。そのため、正解の見えないなかで手探りで進んでいくことが必要となる不確実性の高い現代においては、うまく噛み合わない状況になっている開発現場も少なくありません。

本書では、共創を実現する具体的な⼿段としてのアジャイル開発を下敷きに、これからのソフトウェア開発 / デジタルプロダクトづくりに、作り⼿ (エンジニア、開発者、デザイナーなど) と、それを必要とする⼈ (クライアント) がどのように臨むべきなのか、その考え方と行い方を具体的に提⽰する一冊です。

「正しいものを正しく作る (著者の掲げる理念)」とは、すなわち「正しくないものを作らない」戦略をとることであり、そのためには粘り強く「正しく作れているか?」と問いに置き換えながら探索的に作っていく必要があります。問いを立て、仮説を立て、チームととともに越境しながら前進していく。本書はそのための力強い手引きとなるでしょう。
イントロダクション 正しいものを正しく作れているか?

第 1 章 なぜプロダクトづくりがうまくいかないのか
1-1 なぜ、プロダクトづくりに苦戦し続けるのか?

1-2 多様性がプロダクトの不確実性を高める

1-3 不確実性とのこれまでの戦い方

1-4 アジャイル開発への期待と失望

第 2 章 プロダクトをアジャイルにつくる
2-1 アジャイル開発とは何か

2-2 スクラムとは何か

2-3 スクラムチーム

2-4 スクラムイベント

2-5 スクラムの成果物

2-6 自分たちのアジャイル開発とどう向き合うべきか

第 3 章 不確実性への適応
3-1 アジャイル開発で乗り越えられない不確実性

3-2 共通の軸を持つ

3-3 余白の戦略

3-4 スプリント強度を高める戦術

3-5 全体への共通理解を統べる作戦

第 4 章 アジャイル開発は 2 度失敗する
4-1 チームは 2 度、壁にぶつかる

4-2 プロダクトオーナーの果たすべき役割

4-3 チームとプロダクトオーナー間に横たわる 2 つの境界

第 5 章 仮説検証型アジャイル開発
5-1 自分たちの基準を作る

5-2 正しくないものを作らないための原則

5-3 仮説検証型アジャイル開発における価値探索

5-4 1 回目のモデル化 (仮説キャンバス)

5-5 1 回目の検証 (ユーザーインタビュー)

5-6 2 回目のモデル化 (ユーザー行動フローのモデル化)

5-7 2 回目の検証 (プロトタイプによる検証)

5-8 その他の検証手段

5-9 仮説検証の補足ー本質、実体、形態

第 6 章 ともにつくる
6-1 正しいものを正しく作る

6-2 視座、視野を越境する

6-3 チームとともに作る

あとがき
参考文献 / 索引

技書の森解説

作る技術は身に付いていても、作っているものが本当に必要とされているかは、作り終えるまで分からないことが少なくありません。『正しいものを正しくつくる』 (市谷聡啓 著、ビー・エヌ・エヌ新社、2019 年 6 月 14 日発売) は、そうした正解の見えないプロダクトづくりに、作り手と、それを必要とするクライアントがどう臨むべきかを、アジャイル開発を下敷きに示す書籍です。副題は「プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について」です。版元の紹介文は、著者の掲げる理念である正しいものを正しく作ることを「正しくないものを作らない」戦略と言い換え、問いを立て、仮説を立て、チームとともに越境しながら前進していくための手引きと位置づけています。

イントロダクションと全 6 章、不確実性の整理から仮説検証まで

本文はイントロダクション「正しいものを正しく作れているか?」に続く全 6 章で、巻末にあとがきと参考文献、索引が付きます。第 1 章「なぜプロダクトづくりがうまくいかないのか」は、多様性がプロダクトの不確実性を高めることや、不確実性とのこれまでの戦い方、アジャイル開発への期待と失望を整理します。第 2 章「プロダクトをアジャイルにつくる」はアジャイル開発とは何か、スクラムとは何かから入り、スクラムチーム、スクラムイベント、スクラムの成果物の節で基本を押さえます。第 3 章「不確実性への適応」は共通の軸を持つこと、余白の戦略、スプリント強度を高める戦術を扱い、第 4 章「アジャイル開発は 2 度失敗する」はプロダクトオーナーの果たすべき役割と、チームとプロダクトオーナーの間にある 2 つの境界を論じます。第 5 章「仮説検証型アジャイル開発」は仮説キャンバスによる 1 回目のモデル化とユーザーインタビューによる検証、ユーザー行動フローによる 2 回目のモデル化とプロトタイプによる検証へと進み、第 6 章「ともにつくる」は視座と視野の越境、チームとともに作ることで締めくくられます。

作り方の不確実性と、作るものの不確実性

ソフトウェア開発の不確実性には、どう作るかという実現手段の不確実性と、何を作るかという目的の不確実性があります。アジャイル な開発は短い反復で動くソフトウェアを届け、その結果を見て計画を直すことで、前者に強く効きます。スクラム はその代表的な枠組みで、スプリントごとに成果を検査し、進め方を適応させる仕組みを持っています。ただし、反復のたびに何を作るかはバックログに積まれた項目に委ねられるため、項目そのものが利用者の課題を外していれば、チームは外れたものを効率よく作り続けることになります。開発が順調に回っているのに使われないプロダクトが生まれるのは、このずれが反復の内側からは見えにくいためです。

そこで効いてくるのが、作る前に仮説を言葉にし、安い手段で確かめる考え方です。コードを書いて機能を出すよりも、利用者に話を聞くことや、画面の流れだけを再現した試作品を見せることのほうが、外れた場合の損失は小さく済みます。本書の第 5 章も、仮説キャンバスによるモデル化、ユーザーインタビューによる検証、ユーザー行動フローのモデル化、プロトタイプによる検証の順に節を並べ、モデル化と検証を 2 回ずつ交互に置いています。仮説の立て方を知っていても、検証の結果を開発の判断へ戻す経路がチームに無ければ、検証はやりっぱなしになりがちです。本書が開発の進め方と仮説検証を 1 冊で扱っている点は、その経路を設計する手掛かりになります。

エンジニアにもクライアント側にも向く理由、向かない目的

版元の紹介文は、エンジニア、開発者、デザイナーなどの作り手と、プロダクトを必要とするクライアントの双方がどう臨むべきかを示す本と説明しています。第 2 章でスクラムの基本を押さえる構成なので、アジャイル開発の経験が浅くても読み進められますが、本書はプログラミングや設計の技法を扱う本ではありません。本書の刊行後の 2020 年にスクラムガイドが改訂されているので、用語や役割の呼び方は 2020 年版のガイドと照らして読むのが安全です。スクラムの各イベントの運営を細かく練習したい場合は、スクラムに絞った入門書を併せて読むほうが目的に近づきます。著者の市谷聡啓氏について、版元の著者プロフィール (2026 年 10 月の閲覧時点) は、ギルドワークス株式会社と株式会社エナジャイルの代表取締役、DevLOVE コミュニティのファウンダーと紹介し、プログラマーから SIer でのプロジェクトマネジメント、大規模インターネットサービスのプロデューサー、アジャイル開発の実践を経てギルドワークスを立ち上げた経歴を挙げています。共著に『カイゼン・ジャーニー』 (翔泳社) があります。

スプリントは回っているのに手応えが無いと感じている開発チームのリーダーや、外部のチームに開発を頼む立場で何をどう伝えればよいか迷っている事業側の担当者にとって、本書は作るものを確かめながら作るための共通の考え方と手順を与えてくれる一冊です。チームでの開発や役割の分担に関わる本を広く比べたい場合は、チーム開発とマネジメントの本の選び方 も参考になります。

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